2012年9月22日土曜日

傷ついた聖地 復興への祈り

http://www.yomiuri.co.jp/zoomup/zo_111031_01.htm

9月上旬、紀伊半島などに甚大な被害をもたらした台風12号は、世界遺産の霊場・熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社)や、参詣道である熊野古道にも深い爪痕を残した。
 熊野那智大社(和歌山県那智勝浦町)では、台風直後に境内を濁流が通り、裏山から崩れた大量の土砂が社殿の周囲を覆った。近畿各地の神職らが駆けつけて土砂を手作業で取り除き、今は重機も使って撤去を急ぐ。
 熊野速玉大社(同県新宮市)は、例大祭で神事を行う御旅所(おたびしょ)が熊野川の増水で流失し、祭礼の規模縮小も検討した。だが、神主らは「災害の後だからこそ、犠牲者の鎮魂と復興を願わなければ」と急ごしらえで仮の御旅所を設け、10月15、16両日に例大祭を催した。
 紀伊山地を通る熊野古道は土砂崩れで寸断された箇所も多いが、修復や迂回(うかい)路の整備が検討されている。
 いにしえから民衆の信仰を集め、心のよりどころであった熊野。熊野那智大社の朝日芳英宮司(78)は「神様へ感謝をささげるため、人は神のいる場所へと歩く。祈りの地に向かう道を、早く元通りつなげたい」と願う。傷ついた聖地は、ゆっくりとよみがえろうとしている。
 写真と文 竹田津敦史

仮の御旅所で例大祭の神事を行う熊野速玉大社の神主ら。流された御旅所は元の場所もわからなくなったが、杉木立の中を整地して例大祭に間に合わせた(16日、新宮市で)

土砂の撤去が進む熊野那智大社。埋まっていた社殿の土台も現れ、朝日宮司は「年内には元の姿を取り戻し、正月を迎えたい」と話す(21日、那智勝浦町で)


熊野本宮大社では豪雨で被災した宿坊の再建工事を前に、神主が作業の無事を祈願した。九鬼家隆(くきいえたか)宮司は「再び熊野に多くの人を呼びたい」(25日、田辺市で)

土砂の撤去が進む熊野那智大社。埋まっていた社殿の土台も現れ、朝日宮司は「年内には元の姿を取り戻し、正月を迎えたい」と話す(21日、那智勝浦町で)

熊野本宮大社では豪雨で被災した宿坊の再建工事を前に、神主が作業の無事を祈願した。九鬼家隆(くきいえたか)宮司は「再び熊野に多くの人を呼びたい」(25日、田辺市で)

例大祭で熊野古道を進む船。周辺は豪雨による濁流で樹木や草、表土が流され、大きな被害の爪痕が残る(16日、新宮市の熊野川で)

例大祭で熊野古道を進む船。周辺は豪雨による濁流で樹木や草、表土が流され、大きな被害の爪痕が残る(16日、新宮市の熊野川で)

那智大社のご神体「那智の滝」の前に、崩れた岩や倒木が残り、景観が大きく変わった(21日、那智勝浦町で)

御船祭で船を待つ熊野速玉大社の神主。飛び地境内の御船島は台風の大雨による濁流で樹木や草が根こそぎ流されて岩肌がむき出しになり、様相が一変した(16日、三重県紀宝町で)

御船祭で船を待つ熊野速玉大社の神主。飛び地境内の御船島は台風の大雨による濁流で樹木や草が根こそぎ流されて岩肌がむき出しになり、様相が一変した(16日、三重県紀宝町で)

例大祭の神事を行う熊野速玉大社の神主。台風被害からの復興も祈念された(16日、和歌山県新宮市で)

例大祭で神主を出迎える地元住民。台風の被害が大きく規模縮小なども検討されたが、準備を間に合わせて、一部を除いて例年通りに神事を行った(16日、和歌山県新宮市で)

台風12号で浸水し全壊した宿坊を解体するためのお清め式で、建物との別れを惜しむ参加者(25日、和歌山県田辺市の熊野本宮大社で)

熊野古道を散策する観光客。閑散としていた熊野古道に観光客が徐々に戻り始めた(23日、和歌山県田辺市で)

熊野古道を散策する観光客。閑散としていた熊野古道に観光客が徐々に戻り始めた(23日、和歌山県田辺市で)

台風12号で浸水し全壊した宿坊を解体するため、室内のお清めを行う熊野本宮大社の神主たち(25日、和歌山県田辺市の熊野本宮大社で)

カメラを手に熊野古道を散策する観光客。被害を免れた地域は今まで通りの美しい光景が広がる(23日、和歌山県田辺市で)

例大祭で熊野古道を進む船。川の参詣道も台風の豪雨により被害を受けた(16日、和歌山県新宮市の熊野川で)

例大祭で熊野古道を進む船。川の参詣道も台風の豪雨により被害を受けた(16日、和歌山県新宮市の熊野川で)

2011年10月31日  読売新聞)